章末資料 1 インターネットと選挙

日本では,2013年に選挙運動にインターネットの利用が解禁されると,SNS上にはテレビや新聞などでは伝えられない,選挙候補者に関する情報が発信されるようになった。情報の発信者は選挙候補者だけでなく,専門家や一般市民であることもあれば,悪意を持った人物のこともある。このため,その情報が事実であるという保証はない。 2016年のアメリカ大統領選挙では,選挙期間中に,候補者であったドナルド・トランプ氏の支持をローマ教皇が表明したという,真偽の定かではない情報が発信・拡散された。情報が拡散されて間もなく,ローマ教皇は「事実ではない」と発表した。それにもかかわらず「ローマ教皇が支持」という情報は拡散され,選挙結果に影響を与えたといわれている。 このような,社会に影響を及ぼす真偽の定かではない情報は,近年フェイクニュースとよばれる。 フェイクニュース対策の1つに情報の真偽を検証する「ファクトチェック」がある。ファクトチェッカーとよばれる専門家が行った検証結果は,専門サイトで誰でも見ることができ,事実ではない場合は「誤報」,正確性に欠ける場合は「ミスリード」などと発表されている。 SNSを活用した選挙運動は18歳以上の有権者なら誰でも参加できるが,禁止されている運動もある。更には,発信情報が事実でなかったり,誹謗中傷であったりする場合は処罰される可能性がある。ふだんから情報の発信・拡散には注意が必要だが,選挙のようなさまざまな人の思いが交錯する場面では,より注意深くなる必要がある。

章末資料 2 インターネットと選挙

インターネットやセンサの技術の進化に伴い,パソコンやスマートフォン,タブレットといった情報端末だけでなく,家電や自動車など,さまざまなものがインターネットに接続されるようになった。このように,身の回りのさまざまなものがインターネットにつながって,互いにデータをやりとりして世界を構成していくという考え方をIoT(Internet of Things)という。 例えば,冷蔵庫をインターネットに接続すれば,買い物先でスマートフォンを使って冷蔵庫にある食材の確認をしたり,保管されている食材を使った料理レシピの検索をしたりできる。 ただし,近年では家庭用loT機器を狙ったサイバー攻撃も増えてきている。悪意を持って行われる脅威に対して,法整備などの対策を講じていく必要がある。

▲サイバー攻撃の内訳 総務省「情報通信白書」2020年

章末資料 3 ディープラーニング(深層学習)

近年の人工知能(Al)の急速な進歩には,ディープラーニング(深層学習)という技術が貢献している。この技術を用いた人工知能は,大量のデータから自動的に規則性や関連性を見つけ出して学習を続け,私たちの問いかけに最適な反応を選び出す。しかし,選び出した理由を説明する機能を人工知能は持っていない。今後,人工知能がさ まざまな領域で利用されるようになると考えられているが,その反応を絶対的なものと考えてはならない理由の1つがここにある。 さて,2016年に囲碁プログラムが囲碁のプロ棋士を破り,大きな衝撃が広がった。チェスの世界王者がコンピュータに敗れたのは1996年である。その後,将棋のプロ棋士もコンピュータに敗れたものの,囲碁はゲームの複雑さから,あと10年以上はコンピュータに負けることはないと考えられていた。囲碁プログラムの予想を超える発展を支えたのもディープラーニングの技術である。 ディープラーニングを用いた囲碁や将棋のプログラムは,人間がこれまで思いつかなかったような独創的な戦略を取ることも多い。最近では,積極的にコンピュータを使って研究を重ねる棋士も現れている。ディープラーニングで広がった競技の世界を,人間はどのように発展させるのか,新たな局面が訪れている。

豆知識15OECDプライバシー8原則

1980年にOECD(経済協力開発機構)が勧告した「プライバシーガイドライン」の8原則。個人情報についての考え方の基礎となっている。